ノバルティスのPelacarsenが主要な心血管イベント改善を達成できず
スイスの製薬大手ノバルティス(Novartis)がIonis Pharmaceuticalsと共同で開発したLp(a)コレステロール低減薬Pelacarsenは、2026年9月5日に発表された主要な後期治験で心血管イベントの有意な改善を示せなかった。この結果を受けて、同社の株価は翌日の取引で3%下落した。なお、Lp(a)は心血管リスクを高めるリポタンパク質の一種であり、治療ターゲットとして数十億ドル規模の市場が見込まれている。
Lp(a)とは何か、Pelacarsenの試験内容
Lp(a)は1963年に発見された特殊なリポタンパク質で、その血中濃度はほぼ遺伝要因によって決まり、生活習慣による影響は限定的である。高Lp(a)血症は心疾患リスクを2倍以上に増加させることが疫学的に示されている。ノバルティスは、8000人以上が参加した臨床試験で、患者は標準治療を受けたものの、PelacarsenによりLp(a)は確かに低下したが、心血管イベント発生率の低減には至らなかったと説明。ノバルティスの最高医療責任者Shreeram Aradhye氏は、詳細な結果を今後の医学会議で発表予定としている。
アムジェンやイーライリリーの開発にも影響
今回の結果はノバルティスだけでなく、同じくLp(a)低減薬を開発中のアムジェン(Amgen)およびイーライリリー(Eli Lilly)にとっても逆風となっている。アムジェンはOlpasiran、イーライリリーはLepodisiranという別の技術を使った薬を進めており、特にイーライリリーの薬剤は診断前の広範な患者層も対象としている。
発表直後、アムジェンの株価は時間外取引で約5%下落。一方、Ionis Pharmaceuticalsは10%、NewAmsterdam Pharmaは12%の下落を記録し、市場がLp(a)療法の効果に懐疑的な姿勢を鮮明にしたことがうかがえる。アナリストからは、さらに強力なLp(a)低減効果を持つ薬剤が臨床上の優位性を示せるかどうかが今後の焦点になるとの指摘がある。
市場反応と専門家の見解
投資家の間では、この結果はある程度織り込み済みであったため、ノバルティス株は限定的な下落に留まった。花旗のアナリストは、「Pelacarsenが主要評価項目を満たさなかったものの、Lp(a)低減が心血管イベント予防にまったく効果がないとは言い切れない。今後のデータが治療メカニズムや試験デザインの影響を明らかにするだろう」と述べている。
一方、バークレイズは「統計的に有意とされる13%のリスク低減に届かなかった可能性が高い」とし、ジェフリーズは「現代の最適化治療により心血管イベントの発生率自体が減少しており、新薬の試験はより困難かつコスト高になっている」と指摘している。
今後の開発動向と市場の焦点
アムジェンやイーライリリーは異なる技術を採用しており、一部の薬剤ではより深いLp(a)低減効果が期待されているため、開発継続の意義は残る。William Blairのアナリストは、ノバルティスの失敗によって課題は増したものの、Lp(a)治療が完全に否定されたわけではないと述べた。
世界人口の約5分の1がLp(a)関連の心血管リスクを負うと推定される中、同領域の薬剤研究と競争は今後も続く見込みであり、臨床結果が市場の関心を引き続き集めることになる。